慶應法学部小論文

2019 慶應法学部小論文 書き方や解答例、論証のポイントを解説!

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2019 慶應法学部小論文 
書き方や解答例、論証のポイントを解説!

2019年の慶應法学部小論文のテーマは、大沼保昭氏の『人権、国家、文明ー普遍主義的人権観から文際的人権観へ』でしたね。大沼保昭氏は日本の大変著名な法学者であり、特に国際私法を専門としている方です。

今回の小論文では、彼の議論する日本の国際人権観を踏まえながら「日本の戦後人権外交への対応」に対して、具体例を用いながら論証することが求められました。

そのためには、日本の戦後外交の特徴を理解する必要があります。

今回の記事では誰でもわかりやすく、2019年慶應法学部小論文「日本の国際人権外交の対応」を理解できるよう解説しました。それではいきましょう!

設問の解説

次の文章は、国際人権問題への日本の対応について記したものである。著者の議論を400字程度でまとめた上で、それに対するあたなの考えを具体例に触れつつ論じなさい。

慶應法学部小論文 過去問2019年

設問から、今回の小論文においては「日本の国際人権問題への対応」がテーマであるとわかります。

これに対して意見する必要がありますから、日本の国際人権問題への対応はとはどのようなものなのかを明らかにします。その上で、具体例を用いて、その主張に対して意見する必要があります。

解答に、必須の項目は以下です。

答えなければならないメインの問
日本の国際人権問題への対応について、賛成、反対など意見を述べる


解答に含めなければならない内容
・著者の議論をまとめる
→筆者が日本の国際人権問題への対応がどのようなものだと捉えており、それに対してどのような意見を持っているかを明らかにする


・それに対して、あなたの意見を具体例を用いて論じる

要約のポイント

今回の小論文において、要約に含めなければならない内容は、

・日本の外交の特徴をまとめる

・この特徴を踏まえた上で、筆者の見解に対して意見する

日本の人権外交の特徴とは

日本の国際人権問題への対応の是非を論じるためには、まず日本外交の特徴を一読しておいた方が理解がしやすいです。さらっとここは抑えておいてください。

日本の人権外交の特徴して5つ挙げられていました。

①法的枠組みで発想、行動しない

日本人は、訴訟をしない、と言われますが、日本社会は、欧米先進国と比べて「法律によって何かを解決しよう」という意識が弱いです。それは、人権を守るという意識の弱さにもつながってきます。

②価値を他の国へ積極的に宣布しようという意識が弱い

日本は、平和国家として、人権を守る重要性を喧伝しているものの、それを他国に積極的に広めていこう!という姿勢は弱い、ということを述べています。実際、人権思想自体も、元々欧米諸国のものであったということもその原因として挙げられます。

③「和」に象徴された調和優先的文化が強い

①の訴訟嫌いと通ずる部分がありますが、日本人は比較的争いを好みません。他国の人権問題に干渉するということは、相手国政府と対立してしまう場合も少なくありません。これは日本の人権外交を消極的にしている理由の一つです。

④国際問題は米国に委ねてきた

日本は戦後、経済発展に力を入れた一方で、外交や安全保障は日米安全保障条約のもとで米国に頼りきりでした。その意味から、日本の外交は米国に左右される割合が多く、人権問題も例外ではありませんでした。

⑤戦争責任の制約がある

日本は第二次世界大戦時に、中国や朝鮮半島、東南アジア諸国を植民地化したという負の歴史があります。そんな日本が、今となって偉そうに「人権が大事だ!」というのは気が引ける、ということです。このことを筆者は「スネに傷がある」と表現しているわけです。

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論点の解説

今回の論点は、簡略化すると

あなたは日本の戦後の国際人権問題への対応について、どの程度賛成か、反対か”

と言うことです。

国際人権問題とは、世界で起きている「人権」に関する問題です。

例えば、1989年に中国で起きた、民主化を求めたデモ活動である天安門事件では政府によって何千人と犠牲者が出た事件があります。

他にも、アフリカで衣食住がままならず生活を強いられている人を救うための活動や、戦争難民などに支援を送ることなども全て「国際人権問題への対応」を指します。

筆者は、このような国際人権問題に対する対応として、日本にはある特徴があると述べていますね。

日本の国際人権問題に対する対応

この特徴を踏まえた上で、筆者は日本の国際人権問題に対して1段落目にこう述べています。

日本の国際人権への対応には、多くの特徴が見られ、それに基づいた行動は様々な欠点、問題性となって現れる。しかし、欠点はしばしば長所の裏返しである。そうした特徴は欧米、特に米国型の「人権外交」やNGOの国際人権活動を是正、補完し文際的正当性を持つ国際人権政策の基礎づくりに貢献する可能性も有している。

では、まず、ここで言っている欠点問題とはなんでしょうか。

日本の国際人権問題への対応|デメリット

筆者は、日本の国際人権問題に対する対応は「極めて消極的で、無原則的態度である」と主張しています。

具体例として、「当該人権侵害国の国内安定と、人身の安全の確保、日本と当該人権侵害国との2国間関係の安定などの観点から、極力非干渉主義的な形での人権の改善をはかるとしています。

つまり、ちょっとは助けてくれるけど、本質的にはめちゃくちゃ助けてくれるわけではない。と言うことです。

例えば天安門事件などで、中国政府が民間人を戦車で民間人を攻撃していたとしても、日本政府は自衛隊を送って戦う、ことはしません。

あくまでも、他国に干渉は極力しない形で、アメリカや国連などの対応を見ながら、できることだけやる、と言った感じです。

このような態度は、他国から、「日和見外交」として批判されています。

そりゃあ確かに、人権を守る!とか言っておきながらも、実際にはあんまり助けてくれなかったら口先ばっかりじゃん!となってしまいますよね。

これが、現在の日本の人権外交の欠点であり問題点です。

日本の国際人権問題への対応|メリット

日本の国際人権問題への対応の長所は以下の文章に現れている通りです。

そうした特徴は欧米、特に米国型の「人権外交」やNGOの国際人権活動を是正、補完し文際的正当性を持つ国際人権政策の基礎づくりに貢献する可能性も有している

つまり、日本の国際人権問題への対応は、”文際的正当性を持つ国際人権政策の基礎づくりに貢献する“かもしれないことがメリットです。

これはつまり、国際人権政策を作るのが、欧米だけはなくなると言うことがポイントです。

基本的に世界の人権政策を作っているのは欧米諸国ですが、課題文にあるように、欧米諸国の行う国際人権政策は、「独善的」である場合が多いのです。それは、支援としての「押し付け」になってしまう可能性があります。

だからこそ、そのような人権政策に一矢報いる可能性があるのが「日本の日独的な人道支援」と言うことです。

文際的人権観とは

文際的正当性を持つ国際人権政策に関しては、注釈がありましたね。

この背景には、著者のいう「文際的人権観」がある。これは、人権を単にそれぞれが生まれ育った近代の欧米中心の文明の枠内で考えるのではなく、歴史的にそれと並立し、近代文明の行き過ぎと限界を克服するために求められるであろう他の文明の観点からも捉えることを意味する

国際社会において、「人権」とは、普遍的価値観として、誰もが守られなければならないものとして受け入れられています。

しかし、現代の国際政治において、ここでいう人権や、民主主義と言った価値は果たして本当に普遍的であるのかという疑問が突きつけられています。

そもそも人権や民主主義を守らないといけない、これは善だ!と決めたのは欧米諸国です。それに中国やロシア、その他諸国が全面的に賛成したかといえばそういうわけではありません。

これらの価値は、欧米諸国が、「僕らの歴史的にこの価値ってめちゃくちゃ大事だ!ってわかったからみんなも守ろう!」と言っているに過ぎません。

それは正しい側面もありますが、時には押し付けとなってしまう可能性があるのです。

日本は、日和見的な外交であるが故に、自国の価値を押し付けるようなことはしません。このような態度を取り続けることで、国際社会が西洋のいいなり、西洋のやりたいようになってしまうことを防ぐことに貢献しているわけです。

ここでいう文際的人権観とは、誤解を恐れずに簡単にいうと「人権は大事だけど、それって誰もが同じものではなくて、それぞれが育った背景とか、持っている価値観とか歴史が違うんだから、それを押し付けないように、それぞれの視点からみよう!」ということです。

論証のポイント

論証のポイントは、日本の戦後人権外交にはそれぞれメリットデメリットがあるということです。

それらを比較しながら、それぞれに全面的に賛成、反対するというより、どちらの意見にどの程度賛成なのかを論じることが大切です。

論証の内容|具体例

今回の論証として、日本の外交方針が良かったのか悪かったのかを具体的な事例を持って論じる必要がありました。

今回は、米国の独善的な外交がうまくいかなった事例について紹介します。

アフガニスタン戦争/イラク戦争

2001年の世界同時多発以降、アメリカはテロとの戦争を掲げ、アフガニスタンのタリバン政権、イラクのサダムフセイン政権を軍事介入によって打倒しました。

これらの国では独裁的な政治によって民衆の多くが人権侵害されている悲惨な状態があったからです。

しかし、この介入によって、それぞれの国に平和が訪れたかというとそうではありませんでした。

例えば、イランでは、サダムフセイン政権が倒れ、新たなイラン政府も成立しましたが、その後もイラン情勢は安定せずにテロ活動がやまず、アメリカ軍・イギリス軍などが依然として駐留を続け、問題は長期化してしまっています。

ブッシュは、日本と同じように、イランやアフガニスタンも民主化によって平和で豊かな社会を作れると確信しての行動でしたが、結果的にそれはうまくいきませんでした。

この事例はまさに、筆者の「西欧の視点ではなく、それぞれの文明から見た文際的人権の必要性」を示しています。

だからこそ、日本は外交方針として、アメリカなどと同じように独善的な外交政策を行ってはいけないと言えるのではないでしょうか。

まとめ

法学の世界において、最も大切なのは「他者の視点」です。

どんなに自分が正しいと思っていることでも、それを闇雲に押し付けることはいけません。だからこそ筆者は、これまで「人権」を西欧の枠組みだけで捉えるのではなく、それぞれの文明からの見え方を意識すべきと述べているのです。

ちなみに、この「文明の相対化」というトピックは、慶應法学部では頻出です。

2020 「アジアの近代化」

2016「世界文明」

でも同じ似たようなトピックが出ています。

AO FILEではそれぞれの年も解説をしていますので、解説記事だけでも読んでみると理解が深まると思います。

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解答例

筆者は、日本の人権外交は、極めて消極的で、無原則的態度であると主張している。このような戦後日本の国際人権観とその対応は、政策の選択の幅を広げ、柔軟な対応を可能にする一方で、諸国からは「ずるい日本」との印象を与え、独裁政権による人権弾圧を黙認、容認することにもつながる。しかし、筆者はこうした特徴が米国型の「人権外交」やNGOの国際人権活動を是正、補完するという文際的正当性を持つ国際人権政策の基礎づくりに貢献する可能性もあるとしている。

日本の人権外交は、戦争責任という「すねに傷を持つ身」であることに加え、非法的発想、非宣教主義的文化、調和優先的発想という文化的要因や、アジア諸国の政治的、経済的安定を重視するという特徴が挙げられる。その結果、日本の人権外交は極力、非干渉主義的で、欧米と途上国の主張を「足して2で割った」ような曖昧なものとなっている。一方で、このような非独善的な態度は、米国をはじめとする欧米諸国の持つ外交政策上の価値観とは異なるものである。

確かに、日本の戦後人権外交は天安門事件などに挙げられるように、他国からは非協力的なものとして映っているだろう。2015年に、憲法9条の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能となった今でも、日和見的な外交方針は大きく変わったわけではない。一方で、アメリカの独善的とされる外交方針は、アフガニスタン戦争やイラク戦争の軍事介入の失敗が示すように、必ずしも正しいわけではない。したがって、筆者の言うように被害者意識への感受性が高く、非独善的な日本外交が果たす文際的正当性を持つ国際人権政策への貢献は重要である。

2001年の世界同時多発以降、アメリカはテロとの戦争を掲げ、アフガニスタンのタリバン政権、イラクのサダムフセイン政権を軍事介入によって打倒した。ブッシュ大統領は、イラクやアフガニスタンの民主化を進め、独裁政治に苦しむ人を救うことを軍事介入の正当性として掲げた。しかしイラクでは、政権打倒後、むしろ情勢は安定せずに、問題は長期化している。この事例が示すのは、普遍的価値とされるものの干渉であっても、それが良い結果を生むとは限らないことである。その意味では、日本の持つ非独善的な外交のあり方は、世界の人道支援に必要なあり方である。その一方で、唯一の被爆国として、平和や人権のために貢献するべく、その価値を喧伝する役割を日本は国際社会で担っている点は忘れてはならない。

慶應法学部小論文2010年度〜2020年度解答と解説

慶應法学部2010年〜2020年 慶應法学部小論文の解答と解説、勉強方法などを記載しています。

他の年度の解答例はこちらをご参照ください。

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