慶應法学部小論文

慶應法学部小論文2017年 政治/法律学科それぞれの解答と解説対策方法を紹介

facade of ancient roman catholic church on sunny day

慶應法学部
小論文2017
立憲主義

2017 慶應法 小論文の要点

立憲主義は、人々の人権を最大限憲法に基づいて尊重しなければならない。したがって私的領域では、一人一人が個々人の生き方を自律的に自由に判断して生きることを最大限に尊重する。一方で、公共の福祉や社会全体の利益を鑑みた時には公的領域では、それらが一定程度制約されることは止むを得ない。しかし、どこまでが「公的領域」であり、どこからが「私的領域」なのかを区分することはとても難しい。

今回の小論文のキーポイントは、この私的領域と公的領域の区分をどの様に行い、どの様に人々の生き方を最大限尊重しながらも社会全体の利益や秩序を維持するかというジレンマを問う問題である。

論証においては、私的領域と公的領域の線引きの難しさに言及しながら、具体的なトピックなどを用いて主張することが求められる。

近代立憲主義思想を十分に理解し、立憲主義におけるジレンマをどれだけ理解しているかがこの小論文を解けるかの鍵となる。

立憲主義や近代立憲主義思想、公私二分論に関しての詳しい解説はこちらのページも参考にして欲しい。

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課題文の内容解説

1~3 段落 公私二分論の原則

一行目の「公と私の区分は決して人間の本性に基づいた自然のものではない」とはどういうことだろうか。

それは、人それぞれ信じている物が違うからこそ、争いが起きてしまう。だからこそ、社会全体に関わることに関しては一定程度ルールによって規制がなければならない。他方で、社会全体の利益を優先するばかりに、個人が尊重されなくなる事は許されてはならない。という事だ。

しかし、「社会全体の利益」と「個人の尊重」は両立し得ない場合も多い。だからこそ、これらの線引きを人為的に、つまりは司法によって行わなければ、人々が公平に、秩序を保って生きる事はできない、という内容だ。

つまり、社会全体の利益を考えた時に、個人の自由が一定程度制限されるのは止むを得ないが、そのために個人が蔑ろにされないために「憲法」があるのである。

4~7段落目 信教の自由と規制

信教の自由とは、どんな宗教を信じるのも信じないのも自由であることを指す。

つまり、例えどのような宗教を信じていたとしても、それは絶対的に個人の自由であり、それが抑圧される事はない。それは裏返せば、どのような宗教であったとしても皆等しく平等であるということを意味する。つまり、キリスト教だからえらいとか、小さな新興宗教だからよくないとか、それはあり得ない。このように「何を信じるか」は人々の内面的問題であるため、公私二分論における私的領域の原則から個人が選択できなければならない。

しかし、このような私的領域の自由が、社会といった公的領域の自由に進出してくる場合がある。例えば、最近新宿区にはイスラム教の人々が増えてきたから、その人々のために国がモスクを作ってあげよう!と、親切心で考えるかもしれない。これを見た、小さな宗教団体Aが、イスラム教にモスクを作ったんだから私たちにも教会を建ててくれ!とお願いをするかもしれない。だが、それは規模が小さいからダメだと却下されたとしよう。それは、一定程度納得がいくかもしれない。だが、この判断は、イスラム教が小さな宗教団体Aよりも価値が高い、として認めてしまったことになる。これは、どんな宗教でも等しく平等だ、という信教の自由に明らかに反する。

このような事例が、7段落目にある「もっともらしい理由によって正当化されていても、実際には、特定の思想や表現を抑圧したり、助長するために行われている可能性が高い」という内容にあたる。

8~11段落目 プライバシー権と立憲主義の原則

2003年のテキサス州法における同性愛禁止法の事例は、社会における一般道徳が、個人の権利を蔑ろにした事例を示す。テキサス州では、同性同士の合意による性交渉が犯罪とされていたが、個人の性的嗜好は明らかに「プライバシー」つまりは私的領域であるが故に、公的権力によって抑圧する事は許されないという事だ。大切なのは「人生をいかに生きるべきか」については、個々人の価値の自由であり(内的領域)だからこそ、それらを否定する様な社会道徳は許されてはならない。つまり、個人の価値を私的領域の秩序維持という名目で否定することはできない、という解釈になる。

一方で、例えばLGBTは認めたのに、なぜ一夫多妻制は認められないのだろうか。立憲主義において、人生はいかに生きるべきかに善悪はなく、それは憲法に基づいて必ず尊重されなければならない一方で、それら全てを認めることは難しいという事は理解したい。

12~18段落目 愛国心教育と立憲主義

2003年に中央教育委員会が教育基本法改正法案として「国を愛する心」の涵養を掲げた。このことに筆者は「公教育における愛国心教育は思想、良心の自由を侵害するため問題だ」と反対の意を示している。

なぜなら、国を愛する心とは、例えば国歌や国旗を尊ぶ姿勢を成績で定めることは、むしろ社会公共の問題に対する冷静な分析を妨げると主張しているからだ。確かに、国を愛する心を涵養する目的が、「社会公共の利益の実現」という目的なのだとしたら、それに対する手段として「愛国心教育」を掲げることは、宗教の事例で挙げられている様に「当該措置の裏側にある社会の多数派の意図」が隠れている可能性に十分に留意しなければならないだろう。

結局のところ、立憲主義が目指しているのは、「日本という社会が各自の生き方や価値観をそれぞれ大切にする」という公的領域の最大限の尊重と「社会公共の問題については、各人の人生観を否定しない形で議論を通じて、合意を求める社会」の実現である。このことを留意した場合、論証におけるトピックは、法律学から政治学に渡り、多様な論証が可能である。

論証の方法

今回の小論文の論証では、公私二分論に基づいて、具体的な判例を用いて、そのジレンマについて論証をする方法や、立憲主義の目的でもある「各自の生き方や価値観をそれぞれ大切にするための議論がなされる社会の形成」をいかに成し遂げるのかのプロセスを、三権分立の重要性などから論証する方法など多様な方法が考えられる。今回は、論証に使える具体的な判例を紹介する。

剣道実技拒否事件

キリスト教徒の中でも、聖書を厚く信仰する宗教団体「エボバの証人」は、聖書に基づいて、格闘技や政治行動を認めないという解釈を取っている。ある学生は、その信仰に基づいて、体育の必修科目における剣道を拒否した結果、学校を退学になってしまった。彼は、信仰を曲げて剣道をやるべきだったのだろうか、それとも自身の信仰に基づくことが正解なのだろうか。そして、その信仰を曲げてまでも必修科目を強制する権力が国家にはあるのだろうか。例えば、剣道をやることを強制させるという事は、エボバの証人という信仰を「劣った信仰」として意味付けることにも繋がる。このように信教の自由という私的領域が公の領域においてどこまで認められるべきなのかを考えるは良い事例である。剣道実技拒否事件に関しては以下のURLがわかりやすいため、参考にして欲しい

解答例

法律学科

政治学科

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立憲主義や近代立憲主義思想、公私二分論に関しての詳しい解説はこちら

慶應法学部小論文2010年度〜2020年度解答と解説

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