慶應法学部小論文

2012年 慶應法学部 小論文 未来国家 わかりやすく 解答と解説

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2012年 慶應法学部 小論文

「未来国家」 わかりやすく 

解答と解説

2012年慶應法学部小論文のテーマは「未来国家」でした。

この「未来国家」はSF小説の古典とも言える「1984年」ジョージ・オーウェルとオルダス・ハクスリーの「素晴らしい新世界」などを題材としているものです。

未来の国家では、AIや遺伝子技術の発展によって、人々の思想さえも操れるようになってしまうという「未来」について課題文では言及されていました。

つまり、犯罪になり得るような悪いことを企んだ場合には、それを行動にうつす前に抑制することができるわけです。

そんな世界は平和かもしれませんが果たして自由と呼べるのでしょうか?

2012年の慶應法学部小論文では、そんな自由と秩序のジレンマに関して問われています。

それではいきましょう!

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設問の解説

以下の文章は1994年に公刊された「国家の未来」と題する論考で示されたいくつかの未来国家像のうち二つを抜粋したものです。これを読み「未来国家Ⅰ」と「未来国家Ⅱ」に共通する考え方を簡潔にまとめたうえで、それに対する擁護と批判の両方を展開しなさい。

まず、設問から読み取れることは、今回の課題文では「国家の未来」に関しての論考がなされていることです。

この、「国家の未来」に関して、「未来国家Ⅰ」というイメージと「未来国家Ⅱ」というイメージがあるとわかります

そして、解答のポイントとしては、「未来国家Ⅰ」と「未来国家Ⅱ」の二つの国家像の共通の考え方をまとめることが必要です。

そして、その共通の考え方に対して擁護と批判を行う必要があります。

したがって、今回の小論文の全体像は

①「未来国家Ⅰ」と「未来国家Ⅱ」 の共通点についてまとめる
②「未来国家」の共通の考え方について擁護を行う
③「未来国家」の共通の考え方について批判を行う

という流れになるでしょう。

要点の解説

未来国家の共通点とは

未来国家の共通点とはずばり、科学技術によって人間性を人工的に改造し、社会秩序の安寧を目指すという考え方です。

未来国家Ⅰ」では、国民は表情読み取り技術や、脳波探知機によって、不埒な妄想を抱いた際には電気ショックを受ける世界が描かれます。

例えば、殺人をおかしそうになったり、性犯罪を起こそうと人々が思ったときに、それを行動に移そうとすると電気ショックが流れ、それを行うことができなくなるわけです。

このように幼児期から、そんなショックを受けさせられていれば、人々は人々は条件反射によって感情が抑圧され、犯罪的意思を抱かなくなるでしょう。

そうなれば、人々はそもそも悪いことを考えることさえできなくなるのですから、人々を罰するという刑法や立法という国家の役割が不必要になるということです。

「未来国家Ⅱ」では、発達した遺伝子工学を利用した生得的属性の変革によって、そもそも反社会的人間が生まれないシステムについて述べられています。

遺伝子工学によって人々の遺伝子を操り、発達犯罪的意思を持った人間を生まれなくさせる世界がくると述べられています。

犯罪的意思を誰も抱かない世界になったらとても良いかもしれません。

一方で、そもそも「犯罪とは何か」を考えるのは難しいことです。

なぜなら何が悪か、何が善か、を決めることは難しいからです。

例えば、人を殺すことは誰もが悪だと思うかもしれません。

しかし、酒税法などはどうでしょうか。お酒を勝手に作ることが禁止されている法律です。これは「国家の許可を取らなければお酒を国民が勝手に作ってはいけない」という法律です。これは、100%誰もがこの法律に賛成するのでしょうか。

人によって価値観は異なる中で、遺伝子工学によって「善」を規定する難しさがここにあるわけです。

未来国家の擁護と批判

今回の未来国家の要点は、「自由」と「統制」です。

冒頭でも言及しましたが、未来の国家では、AIや遺伝子技術の発展によって、人々の思想さえも操れるようになってしまうという「未来」について課題文では言及されていました。

つまり、犯罪になり得るような悪いことを企んだ場合には、それを行動にうつす前に抑制することができるわけです。

そんな世界は平和かもしれませんが果たして自由と呼べるのでしょうか?

この擁護と批判を行えば言い訳です。

擁護の視点としては、

・治安も良くなるり、潜在犯がいなくなる
→テロとかなくなるし、無差別殺人とかもなくなる

などが挙げられるでしょう。

他方で、批判の視点としては、

・事故とかの危険性(テクノロジーの脆弱性) 臨機応変性に欠ける

・人の思想まで抑圧するのは良くない

・遺伝子の優劣→平等でない ・多様性がなくなる

と言った点が挙げられるでしょう。

それらを比較検討した上で、あなはどう思うかを論述してください。

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論述を深めるためのトピック

信用スコア(アリババ/テンセント)

アリババという会社を知っているでしょうか。

アリペイで知られる今や中国で最も大きな企業です。

そこが提供するアプリでは人の「信用スコア」をはかることができます。

そして、このアプリを国民の多くが利用しています。

信用スコアとは、人の信用度を点数で表しているものです。
その格付けで国や企業の対応が変わります。

いわばクレジットカードの信用スコアみたいなもの

一信用スコアは中国で圧倒的に普及しているスマホ決済での取引情報や、政府のバックアップを受けて犯罪歴 や裁判などの情報まで含まれ、点数もオープンになっています。

これはメリットとして、例えば相手にお金を貸すときに、「どれほど相手のことが信用できるのか?」と言ったことが一眼でわかります。

一方で、それはプライバシーの観点で問題があるでしょう。

このような世界に関して、あなたはどう思うかなどを論述できると面白いかもしれません。

解答例

「未来国家Ⅰ」と「未来国家Ⅱ」にでは、科学技術によって人間性を人工的に改造し、社会秩序の安寧を目指すという考え方が共通している。「未来国家Ⅰ」において、国民は表情読み取り技術や、脳波探知機によって、不埒な妄想を抱いた際には電気ショックを受ける世界が描かれる。幼児からこのコントールを受け続けると、人々は条件反射によって感情が抑圧され、犯罪的意思を全く抱かなくなるという。そうすると、刑法や立法も全く必要のない無政府協和の楽園が出現すると述べられている。

他方「未来国家Ⅱ」では、発達した遺伝子工学を利用した生得的属性の変革によって、そもそも反社会的人間が生まれないシステムについて述べられている。つまり「生来的犯罪人」や暴力的な人間は遺伝子の段階で除去され、正義の規範を担う遺伝子のみが残っていく。各国が主権国家として独立したまま、その政策を推し進めると、地球は闘犬のかみ合いのような世界となる危険性を示唆している。それを克服するためには人類の政治的再統合が求められるという。

 たしかに、このように科学技術によって逸脱した人間を排除することは、社会の秩序維持を簡単にし、コストも削減できるだろう。だが立憲主義国家が制定する憲法という普遍的価値を蔑ろにする危険性もある。特に科学技術の進歩や多様な価値が認められていく社会背景の中、その二つの線引きを行うことは非常に難しいだろう。

 現在、科学技術によって社会の安寧を図るシステムは既に中国のアリババ集団による信用スコアや、イギリスにおけるデザイナーベイビーに関する法律制定など、様々な業界で機能している。アリババ集団は、顧客の信用度を数値化したサービスを展開し、既に5億人を超えるユーザーがいる。信用度が数値化されることによって、公的サービスの優遇や、犯罪率の低下などに寄与しているという。一方で、行き過ぎた監視システムはプライバシー擁護の観点からも慎重に履行すべきである。

事実として、行き過ぎた統制は基本的人権を侵害してきた歴史もある。戦前における治安維持法は、法律によって人権を蔑ろにした悪法であった。そもそも旧憲法では、臣民の権利は法律の範囲内でしか認めず、表現の自由や信教の自由を弾圧した。一方で新憲法においては、第十三条にあるように。国民の権利は公共の福祉に反しない限り最大限に尊重されている。二〇一七年に制定されたテロ等準備罪は、公共の福祉の名の下に思想や表現の自由が侵害される可能性があり、十分に慎重な施行が求められるだろう。上記のような歴史的経緯から、国家の安寧のために科学技術を使う行為に関しても一定の妥当性があるが、個人の自由を最大限保証するべきだ。 

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