2014年 慶應法学部小論文 「ケアの倫理と正義の倫理」 わかりやすくを解説

2014年 慶應法学部小論文 「ケアの倫理と正義の倫理」 わかりやすくを解説

2014年 慶應法学部小論文
 
「ケアの倫理と正義の倫理」
 
わかりやすくを解説

2014年慶應法学部小論文のテーマは、「ケアの倫理と正義の倫理」だった。これはキャロルキリガンの「もう一つの声」で主張されたものである。

倫理とは、いわば人間社会のの間での共存の規範・原理を示すものだ。

キリガンがいうには、社会は一般的に「正義の倫理」に基づいて構成されているが、そこに「ケアの倫理」が排除されていることが問題であると述べる。

今回の小論文では、このケアの倫理、正義の倫理とは何かという視点からあなたなりの考えを語ることが求められている。

また、今回のテーマは立憲主義って何?高校生から始める法学の内容が深く関わっているため、さらに学びを深めたい人はこちらも参考にしてみて欲しい。

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設問の解説

次の文章は、「規範理論における主題としての「家族」」と題する論文の中で、フェミニズムにおけるケアと正義の二元論についての記述の抜粋である。この文章を読み、「ケアの倫理」と「正義の倫理」に関する筆者の分析を踏まえて、あなたの考えを論じなさい。

設問からわかるのは、本論において、「ケアの倫理」と「正義の倫理」という二つの倫理があるということだ。この「ケア」の視点と「正義」の視点をそれぞれまとめることが求められる。

課題文の要点

今回の小論文の要点は、「公的領域で求められる能力」には正義の倫理の方が正しいのか、それともケアの倫理が求められるのか。という点だ。

つまり、政治に「ケアの倫理は必要なのか」という問である。

この政治に「ケアの倫理」が必要かを答えるために、課題文では、

2014年 慶應法学部小論文 要点まとめ

①アリストテレスの政治思想において、家事労働というケアの役割が必然的に女性であったこと

②政治学においては「一般性」や「普遍性」を重視する正義の倫理が求められてきた

③その結果、家事労働などを担う女性の視点が政治から排除されてきた

④「ケア」をになってきたケアの倫理は、果たして本当に政治学に必要ないのか

⑤いや、むしろケアの倫理とは、個別のニーズを汲み上げるという民主主義に最も根ざしたものなのではないか

⑥だからこそ、正義の倫理とケアの倫理が統合した考え方こそ重要である。

という流れを示している。

正義の倫理とは

正義の倫理とは、「一般性」や「普遍性」を重要視した概念であると説明されている。これは、「政策や討議」に求められる、自己中心的ではなく、共通善について考えられる倫理である。

例えば、あなたは「消費税がこれから15%に上がります」と言ったときに賛成でだろうか?反対だろうか?

それだけ聞いたらいやだと思うかもしれない。しかし、日本がこのままでは財政破綻するから仕方がないことなんだ、と理解すれば納得するかもしれない。

このように、正義の倫理では「国家」の共通善を鑑みた上での意思決定が求められるのだ。

ケアの倫理とは

本論では、ケアの倫理とは

ギリガンのケアの倫理が明らかにしたケアの本質とは、確かに全ての人ではなくある特定の人のニーズに答えようとする深いコミットメントにあった。しかし、それがその特定の人格のニーズ、欲求、態度、判断力、行動、そしてその存在全てのあり方にまず焦点に当てることで有る限り、公的領域において何よりも要請されている、他者を他者として尊重する態度

と説明されている。

この「他者を他者として尊重する態度」ことがケアの倫理の本質だ。

例えば、女性の家事労働は、「誰かがやらなければならないもの」であるからこそ、やるのだ。別にやりたいからやってるわけではない。

しかし、それによって「女性は社会に出ていないから、共通善を判断する能力はない」といってしまっていいのだろうか。

このような各個別の状態や背景に注目した能力こそが「ケアの倫理」である。

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課題文の解説

本論における主題テーマは「政治に参加するとはどういうことか」を議論している。全体として述べられていたのは、女性が「構造的」に政治社会から排除されてきた理由を、ケア労働という視点から紐解いている。

その理由として挙げられているのが、そもそも政治に参加するために必要な権利=シティズンシップ(政策決定や公的な討議に必要とされる能力)があるという前提のもと、女性は「構造的に」その能力を歴史的に持ちえてこなかった点を言及している。(ちなみに、こういう「仕方がない」という理由で蔑ろにされることを「構造的不正義[1]」という。

例えば、両親の大学進学と子の大学進学率が相関することや、貧困はループすると行った内容がこの構造的不正義に当てはまる。だからこそ社会福祉によってできるだけスタートラインを同じくすることが福祉国家に求められるのである)実際に、子育てや家事に見られるいわゆるケア労働は「私的領域」での活動であり、個別具体のニーズに対応することが求められてきた。この個別具体のニーズに適応することは、「一般性」を重視する正義の視点とは大幅に異なる。

女性たちは、少なくとも近代以前に関しては私的空間が主な生活の場であり、「政治」には関係のない人々、として認識されてきたわけである。しかし近年女性の社会進出が進み、男女同権が叫ばれる中で、例えば男女雇用機会均等法が1985年に制定された。他方で、子育て、家事というのは「ケアの倫理」によって支えられている一方で、それらは「自発的な」ものとして捉えられてきた。

本論では、個別具体のニーズに適応をする「ケア的な倫理が政治参加にそぐわない」という論理が正しいのか、ということが後半にて展開されている。そもそも、「国民主権」が大前提である日本国憲法の下で生きている中で、女性だから、私的領域にしか関心がないから、という理由で政治から排除されることは許されるべきではない。だからこそ、国民は18歳以上であれば、誰でも選挙権を持ち得ているし、その権利は平等であるはずである。

いわばこれは正義の倫理的な視点である。(*注意して欲しいのは、この正義の倫理という視点は多義的であり、平等、公正、政治への参加権利としてのシティズンシップなどが内包されている)しかし、実際のデータを見てみれば、日本における国会議員割合は10.2%にすぎず、世界平均の24%にさえ全く届いていない[2]。これには、産休、育休などの制度が整っていないことに加え、「女性は家で家事をするべき」と言った家父長制度の名残もあり、(こういう男性はこうすべき、女性はこうすべき、と言った観念をジェンダー規範という。ジェンダー規範は男女同権の話をするときは結構大事)このような「見えない」文化によって抑圧されている現状もある中で、これらは自発的な選択としてみなされるきらいがある。だって、制度としては育休も産休もあるんだから、職場復帰しないのはあなたのせいでしょ、という論理であり、これが本論でも主張されていた負荷にあたる内容説明である。

いわば、このような個別の事情にまで考慮した上で、回答例で示したような「ポジティブアクション(アファーマティブ・アクション)」という考え方が台頭するわけである。

ポジティブアクションに関しては、以下の記事を参考にしてもらえると良い。(https://resily.com/blog/management/affirmative-action/
*アファーマティブアクションとは、「少数派に対する、過去にあった差別をなくそうとする取り組みを指す

このような取り組みは、確かに「平等」ではない。

しかしそもそものスタートラインが違うのだから、それを具体的に変えていくのはそこに差分をつけなければ変わらないのである。これは既得権益と経路依存性の考え方が働いている。

 ちなみに、ここまでの話を聞いて“平等” に興味をもったなら、以下のyoutube動画「Race, equality, equity」(https://www.youtube.com/watch?v=ZT1zCK7aX4k)を見て欲しい。社会の現実を知り、社会福祉の必要性に気づくはずである。

そもそもなぜ政治参加において「公的領域における一般性と普遍性」が重要なのだろうか。一つの答えは、「ポピュリズムに繋がるから」だろう。歴史を紐解けば、なぜ1989年の自由民権運動以前には、男女選挙権はおろか、男子でさえ「満25歳以上、直接国税15円以上を納める男子」という規定があった。この額は、現代の感覚では年収1300万円以上ある人くらいと言われており、超エリート層のみである。なぜエリートしか選挙に参加できなかったのであろうか。これは、政治制度によるところが大きい。近代以前の基本的な統治体制は君主制であり、貴族制である。このような統治体制において、貴族こそがの社会や文化で「高貴、上位、優秀」などと認識されている階層や階級であるからこそ良き統治が行えるとされてきた。これはプラトンの哲人政治にもつながる部分である。話がそれたが、簡単にいうと「豚に政治はわからない」と言われたように、いわゆるシティズンシップを持たない人々が選挙権を持つとろくなことがないという視点からの反論である。論証方法として、歴史的に参政権を紐解き、「誰が政治に参加する権利を持つか」を議論することもまた良いテーマ設定と論証方法である。

現代社会においては、教育を受ける権利が保証されている中で、国民全員が18歳を越えれば適正な政治判断を行えるという前提のもとで参政権は付与されている。しかしながら、近年世界で見られるトランプの台頭、デモクラティックリセッションは、「国民による政治」の正当性を揺るがしているとも言えるだろう。


[1] 『社会福祉における正義』https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/49/2/49_KJ00006853168/_pdf

[2] 女性国会議員比率、193カ国中165位 : G20諸国で最下位https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00409/

解答例

本論は公的領域における規定的な倫理である「正義の倫理」では、現代社会において主に女性が担う「ケア」の観点を排除してしまうと主張する。その結果、ケアを担う女性たちは政治から排除されると述べる。そもそも政治学においては、普遍性や一般性といった能力を有した自律的で公的関心の高い市民こそが市民としてなり得るという。他方で、家事労働を担う主に女性は、家族という個別具体のニーズを満たす私的空間にて生活をしているため、公的領域で求められる能力を持ちえないとされてきた。現代において、このような家事労働は、強制ではないものの自発的でもなく、他者への共感や弱いものからの視線という「ケアの倫理」によって支えられてきた。

ギリガンは、社会においては「正義に倫理」だけでなく「ケアの倫理」の重要性が考慮されるべきであり、両者が統合される必要性を述べている。これまで政治に代表される公的領域への参加資格として強調されてきたのは「一般性」や「普遍性」であった。しかし、この倫理においては例えば幼児期や老齢期において人間は複数の他者に依存しているという本性を排除しているという。むしろある特定の人のニーズを満たそうとする、他者を他者として尊重する態度は政治において求められる能力と合致すると主張する。

たしかに、政治において市民は自己中心的な生活や私的利益の追求だけではなく、共通善についての合意に至る視座を獲得することも重要だ。このような態度を持ち得ない市民によって構成される国家は大衆迎合的な政治に陥る可能性もある。一方で、一般性を超越した個別的な利害やニーズを蔑ろにして良いわけでは決してない。なぜなら、価値観が多様化した現在においてLGBTに見られる性的少数派や自己責任論で片付けられない障害を持つ人々に対する権利を蔑ろにする可能性があるからだ。

 憲法一四条に規定される法の下の平等は、国民一人一人が国家との法的権利・義務の関係において等しく扱われなければならないという倫理を示す。他方で、性的少数派が憲法二四条における「両性の合意」という表記によって、自由に結婚する自由を認められていない。しかし、それらは自発的な選択の結果として解釈され、片付けられてしまう。

性的少数派には、他者を他者として尊重するような「ケアの倫理」からの視点が必要である。このような人々が、他の人々と等しく人権を享受するためには、障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法などに見られる「合理的配慮」に基づいた制度化が検討されるべきではないか。

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