2018 慶應法学部小論文 リスク社会 要約、解答例と解説 

2018 慶應法学部小論文 リスク社会 要約、解答例と解説 

2018 慶應法学部小論文 
リスク社会 
要約、解答例と解説 

設問の解説

次の文章は、現代社会のリスクに我々がどのように対処すべきかを記したものである。著者の議論を400字でまとめた上で、それに対するあなたの考えを具体例に触れつつ述べなさい

今回の設問では、「現代社会のリスクに我々はどのように対処すべきか」に対して答える必要があるとわかります。

この現代社会のリスクに対する対処を考える上では、現代社会のリスクとはそもそもなんなのか、を明らかにする必要があります。

現代社会のリスクに関しては、課題文に記述がありましたね。そして、それらのリスクに対して、どのような対応が必要なのかに関しても筆者の意見が述べられています。

今回の小論文では、「現代社会のリスクの対処方法」を述べる必要があります。

したがって、今回の小論文で必ず含めなければならない内容としては以下のようなものでしょう。

2018年/リスク社会で解答すべき内容

・現代社会のリスクとは何か

・筆者の考えるそのリスクに対する対処方法

・あなたは筆者の考える「現代社会のリスクとその対処法」に対してどう思うか

内容解説

現代社会のリスクとは?その対処法

筆者は、現代社会のリスクとして、以下の3つを挙げています。

【現代社会のリスク】

①リスクをとってでも事業を行おうとする決定者とそれににより損害を被る被影響者の間のコミュニケーションは「完全に同化されることがない対話」であること。

②近年の高度な科学技術のもたらす多様なリスクや危険の定義が専門家に独占され、被害を被りうる当事者の直接的な経験や意義が低下している点

③信頼と不信を先鋭に対立させる思考方法

 それぞれ見ていきましょう。

①完全に同化されることのない対話

決定者と被決定者の「完全に同化されることのない対話」とは、何かしらの意思決定を行う「決定者」と、それによって影響を受ける被決定者の間の意図は完全に合致しないことを指しています。

例えば、政策において、原子力発電をもっと行っていくいくべきだ!と主張する政治家は、日本のエネルギー問題を解決したいという思いから、そのような決定を行っています。確かに、日本全体のエネルギーのことを考えれば、一定のリスクがあったとしても、この主張は妥当性があるかもしれません。

一方で、そのリスクを被る人々がいるかは検討しなければなりません。福島に原発を置くとしたときに、福島の人々は嫌がるでしょう。しかし、政治家は「日本のためだから」と説きます。ですが、その政治家は東京に住んでいたとしたら、もし事故が起きてもそのリスクはありません。

だからこそ、そのリスクを被る人や、その当事者となる人々がいることを認識した上で、彼らを蔑ろにしないための討議や参加は重要なわけです。一方で、その参加や討議さえも強制させてはいけません。

このような、公共的に必要だけど、自分の近くにはおいて欲しくない、という問題の「NIMBY」問題といいます。

NIMBYとは「NOT IN MY BACKYARD」の略で、「私の庭には置かないで」という意味です。政治学でリスクを考える上では大変重要な概念ですので、是非覚えておいてください。

②科学技術のリスクや危険性を専門家に独占されている

近年の高度な科学技術のもたらす多様なリスクや危険の定義は専門家しか知らないという点も大きな問題です。

つまり、被害を被りうる当事者は使用している科学技術であったり、政策であったりのリスクを把握し切れていないのです。

例えば、私たちは普段当たり前のように、電子レンジ、エアコン、TVなどの家電製品を使っていますが、もちろんそれらを使うにはリスクがあります。

例えば、エアコンは掃除をしないで長期で放っておくとまれに、コンプレッサーの破裂によって爆発することがあります。しかし、そのようなリスクや危険性、それが起きうるメカニズムなどを、エアコンを利用しているほとんどの人は知りません。

これは政策決定においても同じことで、ダムや堤防技術が著しく発展したことによって、水害のリスクが減り、住民は対策の必要性や水害に関する知識を勉強する必要が少なくなりました。その結果、水害対策などの知識は専門家のみぞ知る高尚な知識になってしまいました。

しかし、ダムや堤防があるからと言って水害のリスクが0になることはありません。このような状態において、一度水害が起これば甚大な被害が起きることが予想されます。

これが専門家による知識の独占がもたらす二つ目のリスクです。

このリスクに対する対処法として、課題文では、「住民のための技術」から「住民による技術」に重点をおくべきだと行っています。

特に住民にとって可視的で簡単に理解でき、参加可能な「コミュニテイ技術」が必要だと述べているのです。

これはつまり、水害などのリスクや対処法は、その水害を被るリスクのある住民たちが自ら獲得し、習得しないといけないということです。そのためには高度な専門的な技術ではなく、もっと住民に根ざした対処法などを考えていく必要があります。

③信頼と不信を先鋭に対立させる思考方法

信頼と不信は対立するものではなく、相互に強化し合う関係であるということを示しています。

これは、不信があるからこそ、良い政策であったり、アイデアが生まれるとも言い換えられます。

例えば、原子力発電の再稼働に賛成か反対か、という論争があったときに、それらは両極端で交わらないものだと考えがちですが、実際にはそうではありません。

原発に対して賛成する人々の主張が、「原子力発電なしでは日本のエネルギーは賄えない」という主張なのであれば、反対派は、「原子力以外の動力で日本のエネルギーを担う方法はないか?」というより高次の議論ができます。

このように、「リスクにどのように対応するか」というイシューに対して、賛成/反対と言ったようにゼロサム(どちらか一方の要求しか満たせない状態)で考えるのではなく、お互いのリスクや対処に対して適切に議論することが求められます。

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論証のポイント

ここまで、現代社会のリスク関して

1)事業を考える決定者と、それによって影響を受ける人は別である。
それによって生じるリスクを考えなければならない

2)専門家による知識の独占は、当事者の問題解決力をなくす可能性

3)信頼と不信を両極端に考えることのリスク

について話をしました。

その上で、お題は「現代社会のリスク」に関してあなたはどのように捉えるのか

を論じなければなりません。

論証のポイントは、上記の3点に関して、具体的な事例などがないかを考えてみることです。

知っておきたいトピック

普天間基地移設問題

普天間基地移設問題は、決定者と被決定者の解離などを表しています。

米軍の日本駐在は、安全保障上なくてはならないものです。

一方で、米軍基地は日々の訓練などで騒音や、事故などが、起きてしまうリスクもあり、近隣住民には迷惑がかかっています。しかし、だからと言って米軍の基地をなくすことはできません。

このことは、政策における決定者と影響を受ける需要者の解離の問題であると解釈できます。

福島第一原子力発電所事故

東日本大震災の際に、福島第一原子力発電所が地震の津波の影響でメルトダウンを起こし、放射性物質を拡散してしまった事故です。

これまで原子力発電とは、一定のリスクはあるものの、低価格でエネルギーを作れる夢のような電力であると理解されてきました。3,11以前の日本では、チェルノブイリの事故は世界であったものの、原子力発電のリスクに関してイシューとして取り上げられることは多くはありませんでした。

しかし、3,11以降、原子力発電のリスクが社会に認知され、「リスクとどう向き合うか」が社会の大きな議論点となっています。

原子力発電を使うか、使わないかの賛成、反対意見にはそれぞれ妥当性があり、それは「リスクをどこまで受容するか」という問題を孕んでいます

そのときに、被害を被りうる当事者の状況や、国としての観点など、多くの議論点があるなかで、熟議による妥協点の探究が求められています。

解答例

本論では、現代社会のリスクについて、「完全に同化されることのない対話」、リスクの危険や定義が専門家に独占されている点、信頼と不信を先鋭に対立させる思考方法があると述べる。まず、事業の決定に関する是非を被影響者に対して強制することや道徳によって正当化することは慎まねければならないとする。このような了解の過程において、対話の機会ごとに関心のあるものが参加でき、参加できるときにするべきだという。第二に、近年の高度な科学技術のもたらす多様なリスクや危険の定義が専門家に独占され、被害を被りうる当事者の直接的な経験や意義が低下している点を指摘する。これを克服するためには、「住民のための技術」から「住民による技術」に重点をおき、住民にとって可視的かつ参加可能な「コミュニテイ技術」の必要性を説く。最後に、信頼と不信は対立するものではなく、相互に強化し合う関係であるという。このような現代社会のリスクを踏まえた上で、筆者は、現代がリスクといかに付き合い、いかにわかち合っていくかを議論すべきだと述べる。

確かに、東日本大震災の原発事故のように現代社会における科学技術のリスクは存在しており、それらの危険性を認知することは重要である。実際に社会民主党や共産党などの政党はこの事故を受け、原子力発電0を制作として掲げている。一方で、原子力発電のリスクを過大評価するべきではなく、持続可能なエネルギーとして再稼働すべきだと自由民主党などは主張する。これらの主張はどちらが一方的に正しいということではなく、それぞれの主張を十分に討議した上で、リスクとの付き合い方を議論するべきだろう。

東日本大震災における原発事故は科学技術のもちえるリスクを認識させた。元々原子力発電は、被曝の危険性はあるものの、事故が起こる可能性は著しく低いとされてきた。しかし、東日本大震災という未曾有の自体に直面したときに、福島第一原発はメルトダウンを起こし放射性物質を放出してしまった。その結果、福島では被曝に関するデマに溢れ、原子力発電の危険性が叫ばれるようになった。このことは、技術と被害を被る当事者との乖離が産んだ悲劇であろう。

原子力発電は、上記の放射能放出事故などを起こす可能性が一定程度の割合で存在する。与党である自由民主党は原発再稼働を進める意向を示したが、その危険性を述べる人々の意見を蔑ろにしてはならない。特にこのような環境問題は、公共としての必要性は認められるものの、当事者の意向であるNIMBYを無視すべきではない。一方で、持続可能なエネルギーという側面で考えたとき、日本には原子力なしでは火力発電のみ依存してしまうことも問題だ。したがって、このような科学技術のリスクに関しては、当事者を尊重した上で、公共としての必要性も十分検討する必要があるだろう。

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慶應法学部2010年〜2020年 慶應法学部小論文の解答と解説、勉強方法などを記載しています。

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