ドラえもんから考えるリアリズムとリベラリズム/高校生から始める国際政治

ドラえもんから考えるリアリズムとリベラリズム/高校生から始める国際政治

ドラえもんから考える
リアリズムとリベラリズム

国際政治の分析枠組みとして、最も頻繁に用いられる理論がリアリズムリベラリズムです。

これらはそれぞれ、国家の対外行動がどのような指針で行われるのか、というのを予測し、解釈するためのレンズのようなものです。

この分析は、世界の国際秩序を保っていくために、他の国が何を行っているのかを知るために必要です。例えば、隣の国がいきなり軍事力を拡大させていったら、「戦争を起こす気なのか!?」と怖くなってしまいます。しかし、実は軍事力を拡大させていたわけではなく、戦争で負けそうな同盟国を助けるためのものかもしれません。

これらの意図がきちんと伝われば言いですが、情報は簡単には回ってこず、疑心暗鬼になってしまいます。そして、それを読み違えた結果戦争などが起こってしまうわけです。

そのように、相手国の意図がわからない!というときに活躍するのが、リアリズム、リベラリズムというような国際政治理論です。理論に従うと、相手国の意図や行動指針に適切な示唆を与えてくれます。

しかし、リアリズム、リベラリズムとそれぞれ調べても、理論的な説明ばかりで分からないという人も多いのではないでしょうか。

今回は、「ドラえもん」の登場人物の関係性を下に、国際政治における代表的な分析の枠組み「リアリズム」理論と「リベラリズム理論」の違いについて感覚的に理解できるよう解説をしていきます。

リアリズムとリベラリズムの定義

まず、ドラえもんの関係図からリアリズムとリベラリズムを考えるにあたり、それぞれの理論的定義を確認しておきます。

リアリズムの特徴

①人間は本質的に利己的であり、それは不変
②国際政治は究極的にパワー追求、闘争の場
③いかなる国家も安全保障が最重要の国益
④深慮による国際政治の穏健化に期待

中西寛、石田淳、田所昌幸『政治学』有斐閣、p40

リベラリズムの特徴

①人間は本質的に合理的で進歩する
②国際政治でも協調的な問題解決が可能
③国家の対外目標は国家のアイデンティティに強く関係
④通称、制度、規範を重視

『政治学』有斐閣p40
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『ドラえもん』の関係図から考えてみる

『ドラえもん』の主な登場人物は、のび太君、スネ夫、ジャイアン、しずかちゃん、ドラえもんでしょう。

彼らの関係性は普段どのように保たれているのでしょうか。

藤子・F・不二雄、『ドラえもん 39巻』より

ドラえもんからリアリズムを考える

ジャイアンが、のび太のことを殴って、「ドラえもーん!!!」と助けを求める、よくあるシーンですよね。

例えば、ジャイアン、しずかちゃん、のび太君、スネ夫のグループで遊びに行こう!となったときにジャイアンは、ハイキングにいきたくて、のび太君は海に行きたかったとします。

このようなとき、どうしてもハイキングに行きたいジャイアンは、反対意見を持つのび太君をボコボコにすることで自分の意見を通そうとします。

しずかちゃん、スネ夫もジャイアン物理的なパワーで勝つことはできないため、きっと遊ぶ先はハイキングに決まるでしょう。

本当は、のび太君をボコボコにすることはいけません。もし、この場に学校の先生や、ジャイアンのお母さんがいたら、ジャイアンは叱られて、話し合いや多数決によって遊ぶ先を決めるように言われるでしょう。しかし、この場では、そのようなルールを定められる人がいないため、「力が強い人が、思うようにやりたいことができる」ことになるわけです。

このような物理的な力「ハードパワー」によって国際社会の秩序を捉えるのがリアリズムの理論です。

リアリズムの特徴として、②国際政治は究極的にパワー追求、闘争の場というものがありますが、リアリズム論者は「力を強めることこそが最も重要だ」と考えます。

もし話し合いなどを行ってしまえば、どうしてもハイキングに行きたいジャイアンはハイキングにいけないかもしれません。

しかし、物理的に圧倒的に強いジャイアンは、力の勝負に持ち込んでしまえば、ハイキングに行けるのです。だからこそ彼は、力に訴えることで、社会の意思決定を行おうとします。このように、本来人間というものは、自身のしたいことを押し通そうとするものだ捉えるため。リアリズム理論では、①人間は本質的に利己的であり、それは不変というわけです。

本来的に、暴力で物事を決定するなんてよくないことです。しかし国際政治の社会では、それが一定程度許されてしまいます。なぜなら、国際政治はアナーキー(無政府状態)だからです。アナーキーとは、権力者がいない状態を指します。つまり、暴力をふるっても叱る人がいないということです。ドラえもんの事例であれば、あの場に学校の先生やジャイアンのお母さんがいない状態です。叱る人がいないからこそ、あのような横暴がまかり通ってしまうのです。

それは国際社会でも同じで、国際社会では、例えば国際法のようなルールや規範は一定程度ありますが、それを破ったからといって、爆弾が落とされる、と行った制裁が加わることは基本的にありません。

藤子・F・不二雄、『ドラえもん 1巻』より

まさにこれがリアリズム理論ですね笑

ジャイアンに殴られたとき、のび太君はドラえもんを頼りにして、ひみつ道具を使って仕返しをする、というのがいつものパターンです。

そして、仕返しをジャイアンにするわけです。

ドラえもんは、たくさんの道具を持っていますから、その道具を使えば、ジャイアンに勝つこともできるわけです。ビックライトでジャイアンより多くなればジャイアンなんて1コロでしょう。

もし、それでジャイアンが、「のび太にはドラえもんがついているから、今回は殴るのをやめておこう・・・」となれば、それはまさに勢力均衡理論です。

パワーによって国際政治が動かされているというリアリズムに基づいた時、各国の勢力が釣り合った状態では、違いに牽制し合うため、国際平和が維持されるという考え方が、勢力均衡理論です。

今回の事例では

ジャイアンのパワー ≒ のび太+ドラえもん

というように釣り合った状態、である場合には、お互いにうかつに手は出せないということです。

もしのび太君が調子に乗って、ひみつ道具で反撃ばかりしていたとしても、ドラえもんがいないときにはまたボコボコにされるかもしれません。ジャイアンも、いつものようにのび太君をボコボコにしたらまた反撃されるかもしれないわけです。しかし、お互い自分たちを守るために、相手を攻撃できる体制はいつでもとっておかなければなりません。

この特徴が③いかなる国家も安全保障が最重要の国益というリアリズムの論理です。

リアリズム理論はお互いが牽制し合うことで、世界の勢力が保たれ、結果的に平和的秩序を保とうとします。彼らは、お互いに「殴ったり、ひみつ道具を使うのはやめよう。」と交渉したりはしません。なぜなら、その約束が途端に破られる可能性があり、相手のことを信頼できないからです。しかし、信じ合うことはできないけれど、相手の力がどれくらいあるのか、というハードな側面は見て取れます。このような平和理論が④深慮による国際政治の穏健化に期待というリアリズムの第4の特徴になります。

ドラえもんからリベラリズムを考える

上記では、パワーによってドラえもん世界における秩序維持のされ方を考察してきました。

一方リベラリズムでは、人間は合理的で、自らの理性によって進歩する存在であるという考え方に基づいています。

理性的とはどういうことでしょうか。少なくとも、自分の思う通りに行かないからといって、のび太君を殴ってしまうジャイアンは理性的とは言えなさそうです。

そもそもジャイアンがのび太君を殴ってしまうのは、自分のいうことを聞かなかったり、思うように行かないのが嫌だからです。

しかし、彼はそこで暴力という非理性的な方法をとってしまうことで失っている物もあります。それは信頼です。

今回の遊びにおいて、ジャイアンは暴力を振るうことで、自分の行きたかったハイキングに行けるかもしれません。しかし、本当はしずかちゃんも海に行きたかったかもしれません。その場合、次みんなで遊ぶときには、ジャイアンは遊びに誘われないかもしれません。

のび太君を殴ってしまうことによって、その周りの仲間からの信頼も落としてしまうことは、ジャイアンにとっても不合理なことでしょう。

このように短絡的な視点ではなく、長期的な利益などまで見越して、理性的に判断することを前提とするのが、リベラリズムの第一の前提①人間は本質的に合理的で進歩するという内容です。

また、協調的でwin-winな関係によって秩序を維持しようとするのもリベラリズムの特徴です

ドラえもんは数々のひみつ道具を持っています。例えばのび太君は、ドラえもんに暗記パンをもらうことで、テストで100点をとったりするわけです。そのような状況を見て、ジャイアンはドラえもんに「俺にも暗記パンを寄越せ!!」と怒鳴ったとしても、ドラえもんは「君みたいないじめっ子にはあげたくない」と拒否するでしょう。

しかし、もしジャイアンが、のび太君を他のいじめっ子から守るなど、弱いのび太君を助けるような行動を良くしていたらどうでしょうか。ドラえもんは、いつものび太君を助けてくれているお礼に、テストが間近で困っているジャイアンに、暗記パンをあげるかもしれません。

このような協調関係は、国際社会における経済協調の枠組みにも言えることです。例えば、日本は車を作ることが得意だから、アメリカに車を輸出し、アメリカからは大量の石油などを買うわけです。もしアメリカが日本と戦争をすれば、日本は負けてしまうかもしれませんが、同時に今まで享受していた、日本の高性能な車も失うわけです。

このような繋がりが、国際社会における平和な秩序を作り出すとするのが、④通称、制度、規範を重視するということです。

WEB用_映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生_メイン(PC壁紙画像・携帯待受画像には使用できません)
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2016

また、映画ドラえもんシリーズでは、いつも喧嘩ばかりしているジャイアンやのび太君も、共通の敵と戦うために力を合わせます。なぜなら、ここで仲間割れなどをしていれば、二人とも生きていけないからです。このように、共通の課題などに対して協力できるという姿勢こそ、②国際政治でも協調的な問題解決が可能という内容になります。

現代の国際社会においても、単独の国だけでは解決できない問題で溢れかえっています。それこそSDGsの17の項目であったり、新型コロナウイルスへの対応などです。このような地球規模の問題は、例え政治上の主義主張の違いから対立していたとしても、協力して乗り越えて行かねばなりません。そのような協調的な問題解決に関心を寄せ、それを担う国際機関(国連やWTOなど)やNPOへの強い期待を持つのがリベラリズムの特徴です。

まとめ

ここまで、ドラえもんの勢力関係を例に、国際政治におけるリアリズム理論と、リベラリズム理論の違いについて説明してきました。これらの理論は、彼らの考え方や行動を正確に読み取るために必要なレンズです。そのレンズをかけることによって、より面白く、適切に国際政治を見つめられるように慣れれば幸いです。

藤子・F・不二雄、『ドラえもん 1巻』より

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